色彩研究室 COLOR STUDY ROOM
色彩研究室ブログ
2010年02月05日

 流行色とは?

「経営労務ディレクター2009・1~2月号」より
              ~カラーコンサルタント 成田イクコ著 ~

  「今年の流行色は?」と聞かれることがある。景気の良い時には、それほど耳にしないのだが、なぜか不況になると尋ねられることが多くなる。どうやら物が売れない時には、「色」に注目してもらうことで、少しでも売れないだろうかと考えるのだろうか。不景気な時には「色」の存在感をひしひしと意識しているのかもしれない。

  ところで、今年の秋冬、街中で見かけることの多い色は何色だろうか。特徴的な色としてはグレイ色が目につくかもしれない。それは定番の色だから当然、という反応が返ってくるかもしれないが、灰色のバリエーションが多いのが今冬の特徴。薄いグレイから濃いグレイまで結構揃っている。一方で、秋冬の定番色の茶色が少ないことにも気づかされる。あくまでも、わたしのカラーウォッチングの感想であって、皆さんはどう思われるだろうか。やっぱり不景気だからグレイが流行るのかしら?という声も聞こえてきそうだが。

  私は、このグレイ色を気にするようになったのは、福田前総理が現役当時、テレビに映しだされるスーツの色がほとんどグレイ色であった頃からである。男性の背広だからグレイ色が多くて当然でしょ、と思われるかもしれないが、そうとも限らず、濃紺のスーツを目にすることもかなり多い。なぜ、福田さんがグレイ色をよく身につけておられたかはわからないが、最近、巷でグレイ色が多く見かけるのは、何か理由があるのだろうか。

  もちろんファッション業界が仕掛ける色戦略が前提にあるのだが、それが実際に流行ったかどうかは、街中でその色を目にする機会が多かったという事実をもって言えるだろう。つまり、この冬ならば、グレイ色に何となく引き寄せられている人達がどれほどいるのかいないのか、ということになるだろう。確かに、色は電磁波であるから人間の心身の波長と無関係ではない。合う、合わないは当然ある。そして、それを社会全体で見た時に、「ある色」の波長に引き寄せられる雰囲気が社会に漂っていた時には、その「ある色」は人気をもつことになる。

  グレイ色が実際に流行るかどうかはさておいても、不況時、ものが売れない時、小売側としては、心理的に多くの色を並べる気持ちにはなりにくいだろう。しかし、こうした限定された色系統のみが店頭に並ぶ場合、消費者にとって良いことが一つある。それは、たとえば今回の場合で言うならば、グレイ色のバリエーションが多いので、この色がお気に入りの人にとっては多くのグレイから好みのグレイを選べるチャンスでもあるということである。ということは、自分が好きな色のバリエーションが仕掛けられたシーズンは、選択肢が多く買物が楽しめることでもある。逆に、そうでない時は、色を求めて街中を探し回らなければならなくなるのである。

  現在のような多様な社会になってくると、本来は色も多様になるはずである。しかし、不景気になれば、なぜか社会に登場する色数は少なくなる。売り手にとっては色の冒険はしづらくなるのだろう。「今年はどのような色が流行るのでしょうか?」この質問に、私は「わからない。」としか応えられない。
 
  しかし、次のようなことは言えるかもしれない。色が流行るとは、ある色が登場し、それが社会に受け入れられて、その結果、飽きられる、という道筋を辿ることである。そこには、社会が動いていることが前提にある。ところが、社会の空気が留まってしまうと、色も動かなくなる。つまり、流行る色とは、社会がある程度活性化しているからこそ現われるのである。言い換えれば、流行る色が登場することは社会の活力をあらわしているとも言えよう。となると、流行色は、ないよりもあった方がいい、ということになるだろう。今は、少しでも流行色が話題になることを期待したいものである。

 

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著者 成田イクコ  出版元 かんぽうサービス



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