「CUDを知っていますか?」
「経営労務ディレクター2016・7~8月号」より
~カラーコンサルタント 成田イクコ著〜
最近ではカラーユニバーサルデザイン(以下、CUDと言う)を積極的に取り入れている会社も多くなった。テレビのリモコン表示に、色だけでなく色と言葉の併用がされているのも一例である。以前も取り上げたテーマであるが、今回はもう少し詳細に触れたいと思う。
まず、ユニバーサルデザインとは何だろうか。バリアフリーとどのように違うのだろうか。今では車椅子の人に配慮した公共空間や集合住宅における段差のないバリアフリー状態が当たり前であるが、そこに至ったのはそれほど大昔ではない。アメリカで1990年にADA(障害をもつアメリカ人法)の成立がきっかけで日本でもさまざまな法律が作られていったらしい。それより遡ること、WHOから依頼を受けた学識者たちが作成した「バリアフリーデザイン報告書」が提出された中にユニバーサルデザインという言葉は使われている。それら学識者の一人であるロナルド・メイス氏が1998年の第一回ユニバーサルデザイン学会で講演したが、その1週間後に亡くなった。この分野でカリスマ的存在だったため混乱が生じたと言われている。バリアフリーと違いユニバーサルデザインは障害者や高齢者だけでなく誰にでも使いやすい形に初めから設計するのである。日本にもロナルド・メイス氏が7原則とともに提唱したこのユニバーサルデザインが持ち込まれた。
7原則の中に「必要な情報がすぐにわかること」「デザインが原因の危険や事故を防げること」とういう項目がある。CUDはこれに該当する。情報伝達の上で視覚に依る割合が圧倒的に高いことから、日本国内で318万人(静岡県の人口とほぼ同じ)、20人に1人の割合で色覚障害の人が存在する現実を考えると、社会全体で対応しなければならないことがわかる。原因は先天的な遺伝であり病気ではない。巷では色弱は治る、といった本があるが、これらは色覚検査をパスするがための方法論にすぎない。本人の色覚を変えることはできない。
色覚異常は科学者ドルトンによって発見された。通常、視細胞には3種類の錐状体がある。それら錐状体のうち、いずれかの感度が低いか、あるいは存在しないかで、P型、D型、S型といったほぼ3種類の色弱がある。色覚の異常についての呼称の呼び方は特に決められたものはない。NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構では人間のもつ遺伝子が多様であることから色覚を正常、異常に分けるのではなく、「一般色覚」と「色・弱者」と呼ぶことにしている。今では、その色・弱者のタイプにより色の区別の有無を知ることのできる無料アプリ「色のシミュレータ」がある。ただ、気をつけたいのは、このチェックツールは、「ある1つの色が色弱の人にはどういう色に見えるのか?」を示すものではないということである。つまり、色弱の人が実際に見ている色ではない。そのツールは、「複数の色の差が見分けやすいか?」を調べるためのものである。今ではツールを駆使して、実際に色の見分けができる配色も考えることができる。昨今、防犯や災害マップといった情報伝達は重要事項であろう。色と文字の併用に 加え、色だけによる区別も行いたい。CUDは必須の課題なのである。
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