「自転車レーンの色塗装について」
「経営労務ディレクター2012・3~4月号」より
~カラーコンサルタント 成田イクコ著 ~
自転車と歩行者の事故がかなり増えているそうだ。自転車を利用する人達が、特に都会において以前にも増して多くなっているせいだろう。昨年の自転車関連事故のうち全国の約2割に当たる26人が死亡(平成23年8月末時点)という統計結果もでている。確かに、個人的にも、歩道を歩いていて自転車とぶつかりそうになり、ひやりとした経験は数自転車と歩行者の事故がかなり増えているそうだ。自転車を利用多くある。
警察庁は、2011年の10月に自転車交通総合対策の中で自転車の原則車道走行を公表した。報道でご存知の方も多いだろう。自転車は歩道を走ることが当たり前と思っていた方は、戸惑われているかもしれない。しかし、1960年に制定された道交法には、自転車は車道走行と定めている。しかし、その後の増え続ける車との衝突事故が増えたため、1970年と78年の法改正によって、歩道走行を例外的に容認し、それが今や一般化したのが実情らしい。こうして、世界でもまれな自転車の歩道走行があたりまえの国となったのである。つまり、今回行われた対策は、自転車は車両であるという法の原則に戻すということであって、決して法改正を行ったわけではないのである。
本来ならば。自転車道については、縁石や柵などで車道や歩道と分けるべきなのだが、費用の面から、単に線や色で区分けするだけの自転車専用通行帯、いわゆる自転車レーンの整備がすすめられているのが現状である。そして警視庁では、自転車レーンとして車道左側を青色舗装することを決めたのである。
道路の色彩環境については、以前もここで述べさせて頂いたのだが、前述にあるように、車と自転車を分離するための方法として、道路の色舗装が当たり前のように行われていくことに対して、改めて警笛を鳴らしたいと思う。
私も会員として属している「公共の色彩を考える会」において、一昨年、道路の色舗装(自転車レーンの色舗装を含む)について、46名にアンケート調査を行った。その中で、自転車レーンに青色舗装をした場合、街並みに調和していると思うか、という質問に対して「不調和だ」「あまり調和していない」を含めて94%が街並みに不調和と回答している。また、自転車レーンの色を周囲の建物の色に近い色(この場合はベージュ系)にした場合は「調和している」「やや調和している」を含め87%が調和感を抱くといった結果が得られた。つまり、自転車レーンに色塗総を行うならば、街の景観色に近い色ならば良いという意見が見られるが、青色で塗装することに対しては、景観上、問題があるという意見が多いことがわかった。
安全性の面からの質問として、自転車レーンに色を塗装しない場合の安全面の感じ方に対して「危険だ」は44%、「どちらも変わらない」は51%であった。「危険である理由」としては視覚的に認知できる方がよいという意見、「どちらも変わらない」理由として、安全の有無はマナーや交通事情の問題であって、色塗装したからといって安全ではないという意見がみられた。
以上の結果からみると、一見、景観と安全を、どちらを優先するか、という話に思われがちだが、回答者のさまざまな意見からは、色塗装することで問題は解決しないだろう、つまり、安全面は解決しないばかりか、景観も悪くなる、といった意味合いが感じられた。
冷静に考えればわかることだが、事故を防ぐ安全対策としては、まずは車道に自転車レーンがあることを人々に徹底周知させることである。車のドライバーも自転車に乗る人も、車道に青色が見えるだけでは、安全だとは思わないだろう。車道左側は自転車が走行するものと皆が当然のごとく認知することでしか事故は防げないのである。
東京都内はまだしも、地方の歴史的な街並みが保たれている地域で、少しでも色舗装が行われたらどうだろうか。せっかくの美しい街並み景観は破壊されることになる。警視庁の色舗装対策をモデルとせず、各自治体の独自の対策をもって、景観が守られることを願うばかりである。
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